茶やリンゴの皮に防御効果
“ 1 日 1 個のリンゴで医者いらず”といいます。2010年米国化学学会(ACS)年次集会〔ニューヨーク〕で緑茶には前立腺癌の発症予防効果および細菌やウイルス、寄生虫の感染を防御する免疫系の賦活作用が、さらにリンゴの皮には肝癌の発症予防効果があることなどが、報告されました。
ウィスコンシン大学(ウィスコンシン州マディソン)医療科学センター皮膚科部長で研究主任のHasan Mukhtar教授は、トランスジェニックマウス前立腺癌モデルに唯一の飲料として単離された緑茶ポリフェノールを与えたところ、前立腺癌の発症と転移が遅延することを明らかにしました。
同教授は、マウスが摂取したポリフェノール量は、茶を飲用するヒトでも摂取可能であることから、ヒトの前立腺癌発症と進行も予防できる可能性があると主張しています。
ミネソタ大学Hormel研究所(ミネソタ州オースチン)のZigang Dong教授は、エピガロカテキンガレートやテアフラビンなど茶の成分を用いた皮膚癌の局所用製剤を開発中であると報告。これは紫外線を遮断する現在の日焼け止めと異なり、紫外線には影響しないが、細胞の増殖とアポトーシスを制御する細胞内シグナル伝達経路に作用する。
ほかにも、Brigham and Women's 病院(ボストン)のJack Bukowski博士は、茶が免疫応答を増強すると報告。被験者に 1 日 5 〜 6 杯の茶かコーヒーを飲んでもらったところ、茶群のみが試験終了時に免疫応答の増強を示しました。茶群ではガンマ・デルタT細胞数が 3倍に増え、感染に対するインターフェロンの産生がコーヒー群より5 倍多い結果でました。
同博士によると、茶飲用者におけるこうした免疫応答の増強は感染防御能の上昇を示唆しているといいます。
タフツ大学(ボストン)Jean Mayer加齢に伴うヒト栄養研究センターのErnest Schaefer所長によると、2 型糖尿病患者 8 例を対象としたパイロット研究で、8 週間にわたり 1 日 6 杯の茶を飲用させた結果、血糖値が15〜20%低下した。
現在、インスリン療法を受けていない 2 型糖尿病患者40例を対象に紅茶と緑茶の血糖値に対する効果を検討するランダム化試験が進行中だという。
米国茶協会(ニューヨーク)のJoe Simrany会長によると、米国で飲まれている茶の約90%が紅茶だが、過去 4 年間に緑茶の消費量は3〜4%から9%近くまで倍増した。同協会は茶の抗酸化物質含有量の規格化を図っている。
また、同大学Jean MayerセンターのJeffrey Blumberg副所長は、さまざまな種類の茶を飲めば食事に栄養付加できると指摘。「今後は茶のポリフェノール量を正確に測定したうえで、慢性疾患リスクを低下させる茶の役割を評価する研究が計画されることを期待する」と述べました。
コーネル大学(ニューヨーク州イサカ)のK. L. Wolf博士らは、茶に含まれる抗酸化物質のほかに、リンゴの皮にも類似の効果があるとJournal of Agricultural and Food Chemistry(51: 1676-1683)に発表しました。研究対象となった 4 種類のリンゴ(ロームビューティー、アイダレッド、コートランド、ゴールデンデリシャス)のいずれにも、フラボノイドとフェノール類の総含有量は、果肉のみ、または果肉と皮よりも皮に最も多い結果がでました。
さらに、リンゴの皮はHepG2ヒト肝癌細胞の増殖抑制効果が最も高いことがわかりました。なかでもロームビューティーの皮は低濃度で約50%の癌細胞増殖阻害効果を示しました。
同博士は「リンゴの皮はフェノール含量が多く、抗酸化活性および抗増殖活性を有します。これは、抗酸化物質の供給源としてリンゴの皮は食べたほうがよいことを示唆している」と述べています。
お茶やリンゴがそのまま摂取できる条件としては、農薬に表面が汚染されていないことが大前提ですね。
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