レクチンがエイズウイルスの侵入阻止として有望視
バナナに含まれる成分レクチン(BanLec)がHIV(エイズウイルス)の阻害薬として有望であると報告されました(Journal of Biological Chemistry(2010; 285: 8646-8655)。
共同研究者で同大学生物化学のErwin J. Goldstein名誉教授とHarry C. Winter助教授は、BanLecをバナナから分離・精製する方法を開発しました。この開発をもとにMarkovitz教授らは今回、BanLecが抗 HIV作用を有するレクチンであることを発見し、その効力は現在臨床で用いられているenfuvirtide(T-20)やmaravirocと同等であることを確認しました。
糖蛋白質のレクチンは、ウイルスのような外敵を発見し、自らを病原体に付着させることができます。今回の研究で、BanLecは、HIV-1エンベロープ糖蛋白質gp120に結合することにより、HIVの細胞侵入を防ぎ感染を阻害すると推測されています。
HIV(エイズウイルス)薬の問題は、ウイルスが変異し治療抵抗性を有するものが出現する点です。これはインフルエンザウイルスなど他のウイルス、あるいは抗生物質に共通した問題です。
レクチンはHIV-1エンベロープ上の糖蛋白質に結合しますが、ウイルスがそれらを回避するには、おそらく複数回変異しなければならないので耐性ができにくいといえるでしょう。
レクチンは腟と直腸からのHIV(エイズウイルス)感染を阻害するうえで、標的細胞に侵入する前にウイルスを阻止することのできる物質として重宝されるでしょう。
バナナはフラボノイド系のファイトケミカルをたくさん含んでいますので、レクチン単体だけよりも効果がある可能性があります。自然の植物の威力を改めて感じますね。
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